使用者は、人件費を抑制するため、労働者を出来るだけ安く、長時間働かせようとする傾向があります。
このような使用者の傾向を放置すると、労働者は本来得られるべき賃金を得られないばかりか、過労によってうつ病に罹患したり、
過労死・過労自死まで追いつめられることもあります。また、労働者が健康に働けない職場環境は、長期的に見て使用者にとってもマイナスの要因となります。
そこで、残業代の請求を通じて本来得られるべき賃金を得ると同時に、労働環境を改善し、労働者の生命と健康を守る必要があるのです。
残業代とは一般的に、
(1) 労働基準法上の時間外労働や休日労働等に対して支払われる割増賃金
(2) 就業規則で定められた就業時間を超えて働いた労働や、就業規則上に定められた法定休日以外の休日に行われた労働に対する賃金
の総称を意味します。
労働基準法上の時間外労働とは、1日8時間を超えた時間及び、1週間で40時間を超えた労働をいいます。
また、労働基準法上の休日労働とは、法定休日(毎週少くとも1回の休日又は、4週間を通じ4日以上の休日)における労働をいいます。
労働基準法上の時間外労働の割増率は25%以上50%以下となっています。
また、労働基準法上の休日労働の割増率は35%以上50%以下となっています。
なお、労働基準法上の時間外労働が延長されて深夜労働(22時から翌5時まで)となった場合の割増率は50%以上、労働基準法上の休日労働が延長されて深夜労働になった場合の割増率は60%以上となっています。
増賃金の基礎となる賃金を30万円、年間の休日を105日、月間の所定外労働時間を173.3時間((365日-105日)×8時間÷12か月)の労働者が、1か月間で、50時間の法定時間外労働、12時間の法定休日労働、20の法定時間外・深夜労働を行った場合の割増賃金は、以下の算式により、166,547円となります(※実際の訴訟において以下の金額が保障されるものではありません)。
(算式)
時給=300,000円÷173.3時間=1,731円/時間
法定時間外労働割増賃金=1,731円/時間×50時間×1.25=86,575円
法定休日労働割増賃金=1,731円/時間×12時間×1.35=28,042円
法定時間外・深夜労働割増賃金=1,731円/時間×1.5×20時間=51,930円
そして、上記の時間外労働を2年間にわたって行った場合、総額は3,997,128円となり、加えて遅延利息として毎月の賃金支払日の翌日から14.6パーセントの損害金が付きます。
残業代を請求するための法的手段としては、労働審判と訴訟があります。
労働審判は、原則として3回で終了するため、短期間で結論を得ることができますが、争点が複雑な場合や最初から相手方との話し合いに応じる予定が無い場合は、労働審判よりも訴訟を選択する方がよいと考えられます。
これに対して、訴訟は第一審で約1年以上期間が必要となる場合も少なくありませんが、争点が複雑であっても対応できますし、本来の残業代の金額と同じ金額を別途請求できる付加金制度も存在しています。
事案に応じて、労働審判と訴訟との使い分けを行う必要があると考えられます。